2013/2/12 火曜日

出版界の掟(4)

Filed under: 未分類 — 中野雅至 @ 5:51 PM

 ねちっこく、続きの話をしたいと思います。それにしても、日々のことを綴るのはどうも・・と思うし、このブログなるものは本当に難しいですね。とにかく、このテーマで当分書こう。修行のつもりで。今年こそがんばろう。どうも本や報告書ばかりを書いているせいか、包括的に考えてまとめてしまう癖がついていて、こうやって細切れに書くのは難しい・・・。
初版部数と実売数の違い。この違いは読者や一般の人にはそれほどピンとこないかもしれませんが、出版社や著者にとってはものすごい大きな意味があります。
 露骨に言ってしまえば、お金です。国によって違いますが、本を書くことの対価は印税です。国によっては印税の他に執筆料があるとも聞きますが、これは確実に売れるような本で、相当の大物が書いているような本なんでしょう。
 売れようが売れまいが、初版部数であろうが実売数であろうが、とにかく原稿を書いただけで1000万円もらえる。これが執筆料です。元○という肩書きがものすごく重い人なんかがもらうんでしょうな。
それに対して、印税はあくまで一冊○円で部数分をもらうということです。
どちらにしても、これは作詞・作曲と同じで、何かを創り出すことの報酬と言えます。クリエイティブな人間(あるいはクリエイティブなことをするのが大好きな人間)にとっては、何かを創造してお金をもらえるなんて最高です。
 ただし、本でもらえる金額はそれほどのものではありません。通常、価格の10%が印税と言われます。私の経験でもそうです。10%を下回るところもありますが、少数派だと思います。根拠はよくわかりませんが、兎にも角にも、そうなのです。長年の慣習で出来上がったんでしょうか?もしかしたら、出版社の利益・印刷屋さんの利益など、いろんなことを計算した上で著者に入ってくるのが10%というのが適正・・・ということになったのもしれません。誰か知ってたら教えて下さい。
 例えば、800円の新書を書いた場合、1冊売れる毎に80円が著者の手元に入ってくるという計算になります。どうでしょうか。この報酬額・・・。随分楽な商売なのか・・・・?まぁ、生み出すためにどれだけのエネルギーや才能が必要とされるのかを比べようもないので、何とも言えませんが、量から言うと、わずか数十行でカラオケなどを入れれば巨万の印税が発生する歌の世界なんかに比べたら、どんなものなんでしょうか・・・・。
 それはさておき、ここで問題となるが、何に10%を掛けるのかという点です。初版部数か実売数か。結論から言えば、多くの出版社は初版部数(刷り部数)に印税の10%をかけます。もちろん、実売数のところもあるんでしょうが、著者にとってはどちらがうれしいか?
 言うまでもないでしょう。刷り部数(初版部数)です。初版部数が多ければ多いほど、入ってくる印税は多くなるからです。しかも、実売数ではありませんから、必ずしも売れなくてもいいのです。書き終わって本になった時点で、印税がもらえるわけですから、著者にとって、初版部数は大きな関心事項です。
 もちろん、多くの著者はそんなことに関心もない・・・という顔をしています(推測です)が、実際にはものすごく関心があるんです。特に、文筆だけで生計を立てている人にとっては、初版部数はものすごく重要な話だと思います。何部になるかで生活設計が大きく狂ってくるんですから・・・・。だから、初版部数・・・どれくらいですか?と出版社に聞きたくて、聞きたくて仕方ないんですけど、なかなか聞けない。(あくまで推測ですが・・・間違ってたらごめんなさい)
ちなみに、僕等のような大学教員や経営者の著者なんかは、そこまでせっぱ詰まったものではないかもしれません。(これまた推測です)これが兼業作家の強みでしょうか、給料がもらえるのは本当に有り難いことです。もちろん、その分だけ仕事をするんですが・・・。特に、ビジネスで大もうけしているようなビジネスマンの著者にとっては、印税などビジネスで儲ける金額に比べると大したことがないでしょうから(これまたさらに、推測ですが)、あんまり関心がないかもしれません。
 ただし、そうはいっても初版部数がそれほど多いというわけでもありませんので、初版部数に印税率をかけたとしても、いきなりものすごい印税を手にするような著者はいないと思います。
初版10万部なんて書籍は、よほど売れる見込みがあるか、事前の書店へのマーケティングなどで注文が殺到するか、著名小説家でもない限り、あり得ないと思います。万が一返品が多かった時に収拾がつかないからです。
 いや、昨今の出版不況で初版部数は落ちているのが実態だと思います。おそらく1万数千部くらいがこれまでのスタンダードな初版部数であるとして、そこからマイナス数千部というのが実態ではないでしょうか?
 こう考えると、文筆業というのがいかに成り立ちにくくなっているかがわかると思います。私自身は大学教員なので深刻に思っていませんが、このまま出版不況が続けば、職業文筆家というのは少なくなっていくんでしょうね。
 何か職業を持ちながら、その片手間に本を書く・・・、あるいは仕事を文章に転化しやすいというスタイルの兼業文筆家でないと、なかなか難しいでしょう。そう思うと、フリーの書き手というのは本当に立派に思えてきます。
 やっぱり、いきなりネットに生の文章がさらされる、ブログは嫌だな・・・。編集者や校閲の人に依存しきりの私は思うのです。それでもがんばって、明日も書きたいと思います。

2013/2/4 月曜日

出版界の掟(3)

Filed under: 未分類 — 中野雅至 @ 7:18 PM

 出版界の続きの話を。
 先日は、初版部数の話をしました。本が最初に出版される時に、出版社が印刷する部数のことです。
 結論から端的に言ってしまえば、発売即日で10万部というのは、初版の部数が10万部だったということです。10万人の人が買ったというわけではなく、とりあえず出版社は出版する時に10万部刷った。そして、それを全部かどうかわからないけど、とりあえず全国の書店やアマゾンなどのネットにばらまいた。
 さあ、どうだ10万部だ!という理論なわけです。そうでなければ、いくら何でも10万人の人がたった一日で同じ本を買うなんて想像できません。ましてや活字離れが言われているのに・・・。
もしかしたら、年輩の人には読者好きが多くて、そんな高齢者の多くが買ってくれている・・・と想像できなくもない。確かに、朝からゲームセンターに行ったりする高齢者が増えていると言います。あるいは、理屈っぱくて、知的な高齢男性が増えたとも言います。テレビの夕刻の情報番組なんかはそういう層をターゲットにしていたりします。
ただ、それにしても、いきなり10万部なんて・・・考えられません。村上春樹のような神的著者(子供が使っている表現法で感染してしまいました)とマスコミの超煽り報道があれば可能性はあるんでしょうが、そこまで本を読むことに熱心なんですかね・・・日本人は。
 ここで出版界らしい一つの法則が出てきます。それは出版部数と実売数という二つの数字です。
 出版部数というのはとりあえず、出版社が印刷会社に頼んで刷り上げた部数。それに対して、実売数というのは実際に消費者が買ってくれた部数。この二つの数字が出版界にあって、しかも、この二つの数字にはものすごいギャップがあるということです。
 実売数と出版部数とのギャップは大きな問題です。一般の商品の場合には売ってナンボです。テレビを何台作っても、クルマを何台作っても、売れなければ意味がない。販売数と生産台数は同じじゃなきゃ意味がありません。そうしないと企業の売上につながらない。それどころから作っても売れなければ、人件費や工場の稼働費の分だけ赤字になってしまいます。在庫がどれだけは貴重な景気指標です。
 それに対して、出版の世界ではとりあえず出版社が刷った部数が大きな数字になるわけです。実売数なんて、おそらく、実際のところはわからないんじゃないか・・・あるいは、それを正確に計算するのはものすごく手間暇がかかるような気がします。本は長い年月の中で売れてゆくものですから・・・。やっぱりこの二つの数字には大きなギャップが存在する。
 「いきなり10万部突破」とは、実売で10万部ではなくて、とりあえず、10万部刷ったということでしょう。白々しくも推測だと言ってはおきますが。ただし、広告的にはものすごいインパクトがあります。誰だって、10万部突破と書かれれば「話題の本なんだ・・・」と思ってしまうからです。もちろん、そんなことだけで購買につながるほど、日本の不況は甘くないんでしょうが・・・・。
 まぁ、私もとにかく言われてみたい「10万部突破」・・・・いや、謙虚に「3万部突破」でいいです。今年も神様に祈ったんだけど、今のところ御利益はありません・・・。

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