2013/2/4 月曜日

出版界の掟(3)

Filed under: 未分類 — 中野雅至 @ 7:18 PM

 出版界の続きの話を。
 先日は、初版部数の話をしました。本が最初に出版される時に、出版社が印刷する部数のことです。
 結論から端的に言ってしまえば、発売即日で10万部というのは、初版の部数が10万部だったということです。10万人の人が買ったというわけではなく、とりあえず出版社は出版する時に10万部刷った。そして、それを全部かどうかわからないけど、とりあえず全国の書店やアマゾンなどのネットにばらまいた。
 さあ、どうだ10万部だ!という理論なわけです。そうでなければ、いくら何でも10万人の人がたった一日で同じ本を買うなんて想像できません。ましてや活字離れが言われているのに・・・。
もしかしたら、年輩の人には読者好きが多くて、そんな高齢者の多くが買ってくれている・・・と想像できなくもない。確かに、朝からゲームセンターに行ったりする高齢者が増えていると言います。あるいは、理屈っぱくて、知的な高齢男性が増えたとも言います。テレビの夕刻の情報番組なんかはそういう層をターゲットにしていたりします。
ただ、それにしても、いきなり10万部なんて・・・考えられません。村上春樹のような神的著者(子供が使っている表現法で感染してしまいました)とマスコミの超煽り報道があれば可能性はあるんでしょうが、そこまで本を読むことに熱心なんですかね・・・日本人は。
 ここで出版界らしい一つの法則が出てきます。それは出版部数と実売数という二つの数字です。
 出版部数というのはとりあえず、出版社が印刷会社に頼んで刷り上げた部数。それに対して、実売数というのは実際に消費者が買ってくれた部数。この二つの数字が出版界にあって、しかも、この二つの数字にはものすごいギャップがあるということです。
 実売数と出版部数とのギャップは大きな問題です。一般の商品の場合には売ってナンボです。テレビを何台作っても、クルマを何台作っても、売れなければ意味がない。販売数と生産台数は同じじゃなきゃ意味がありません。そうしないと企業の売上につながらない。それどころから作っても売れなければ、人件費や工場の稼働費の分だけ赤字になってしまいます。在庫がどれだけは貴重な景気指標です。
 それに対して、出版の世界ではとりあえず出版社が刷った部数が大きな数字になるわけです。実売数なんて、おそらく、実際のところはわからないんじゃないか・・・あるいは、それを正確に計算するのはものすごく手間暇がかかるような気がします。本は長い年月の中で売れてゆくものですから・・・。やっぱりこの二つの数字には大きなギャップが存在する。
 「いきなり10万部突破」とは、実売で10万部ではなくて、とりあえず、10万部刷ったということでしょう。白々しくも推測だと言ってはおきますが。ただし、広告的にはものすごいインパクトがあります。誰だって、10万部突破と書かれれば「話題の本なんだ・・・」と思ってしまうからです。もちろん、そんなことだけで購買につながるほど、日本の不況は甘くないんでしょうが・・・・。
 まぁ、私もとにかく言われてみたい「10万部突破」・・・・いや、謙虚に「3万部突破」でいいです。今年も神様に祈ったんだけど、今のところ御利益はありません・・・。

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