タレントの天下り
私は厚生労働省に14年間勤務したこともあって、大学では行政のIT化を主に担当しているのだが、広く、公務員制度全般についても研究している。そんなこともあって、昨年は、官房長官が主催する「官民人材センターの制度設計に関する有識者懇談会」という会議の委員として、週に1回程度の割合で、総理官邸に通っていた。
マスコミでは「天下りバンク」と揶揄された会議だが、ここで天下りを巡って様々な議論を戦わせた。私は、この機会を利用して、この1年半程度の時間を費やし、天下り問題を研究しているのだが、実に奥深いもので、マスコミの単調な批判の範疇を超えた問題だとつくづく痛感する。
それはさておき、天下りの本質の一つは「役所の権限と予算を基盤にした再就職の押しつけ」というところにあるのだが、事は再就職に限らず、在職中の出向も範疇に含まれる。また、かつては高級官僚の選挙出馬は「役所の権限と権威」を利用するという点で、「天下り選挙・候補」などと呼ばれ、規制対象とすべきではないか、という議論さえあった。
そんな現象と重ねて、ゲンダイ社会をみると、タレント候補というのは、マスコミというゲンダイ社会において絶大の権限・権威・影響力をもっているものをバックにした「天下り候補」ではないのだろうか。もし、最初から政治家になるという野心を抱いてタレント活動をしているとしたら、こんなことが許されるのだろうか。テレビを使って、自分を宣伝しているようなものではないのか。
役人の天下り規制以上に、タレントの政治家への転身はたちが悪いと思わないだろうか?一体全体、最初から政治家を目指していた人間のコメントなどはバイアスがかかっているのは当然であり、お茶の間に流し続けたテレビに問題はないのだろうか?
公務員の規制ばかりをあげつらうマスコミこそ、自分達の自主規制をいい加減に考えてみたらどうだろうか?
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